導入事例

1店舗でも効果絶大!賃貸営業一人あたり年間3,000万円の売上を実現したDX推進と分業化体制とは 株式会社サンエイホーム様

創業44年を迎えた株式会社サンエイホーム様は、埼玉県所沢市を中心に賃貸仲介・売買仲介・賃貸管理・資産コンサルティングまで、様々な事業領域を擁する総合不動産企業です。

新井専務が入社された2013年から組織体制を大きく変え始め、集客(物件入力・広告出稿)・反響追客・内見の分業化に成功しました。最近ではDX推進室を新設し、システム活用や仕組み化による効率化・自動化を更に進め、「業務効率化」と「売上拡大」を両面で実現しています。

これまでの組織体制の変遷や分業化のポイントについて、専務取締役 新井克明様、店長(賃貸営業課長) 原澤大地様、DX推進室係長 中村祐大様にお話を伺いました。

まずはスタンダードな営業体制から「チーム制導入」による競争文化へ

専務取締役 新井 克明 様

── 分業化前の営業体制と当時の課題について、教えて下さい。

現在当社は分業体制になっていますが、私が入社する前はスタンダードな営業体制でした。賃貸営業社員が、物件仕入れ・写真撮り・掲載から反響追客・来店対応・案内・申込手続き・契約業務まで全てを一人で行っている状況ですね。2012年頃までは、賃貸営業6名と営業事務サポート2名で業務を行っており、営業一人あたりの年間売上は917万円でした。

1から10まで全ての業務を営業が担当することで、何でもできるオールラウンダーが育ちやすい環境の反面、覚える業務の範囲が広すぎてしまい、活躍できるようになるまでかなりの時間を要していました。また、営業によっては得意分野と苦手分野があるにも関わらず、担当する業務は同一のため、それぞれの強みを活かしづらい面も課題でした。

── そこから、まずは営業チームを2チームに分けたのですよね。それはなぜですか?

以前私は、不動産業界とは全く異なる業界、旅行会社に勤めていました。その会社では、店舗でお客様から旅行に関する相談があった際に、チームに顧客を割り振って、そのチーム内で適切な担当者を割り当てていました。顧客セグメントや旅行目的を見極めて「イタリアへのハネムーンだとAさんが得意だから、Aさんが担当する」といったイメージです。

この営業スタイルを不動産業でも試してみようと考え、6名の営業を2チームに分けました。反響があったら、営業個人へ順番に割り振らず、チームに割り振って、チーム内で対応する。そうすれば、個人の強みを生かしながら結果的にお客様の満足度も上がり、更に高い数値目標も視野に入れることが出来るのではないかと期待していました。

また数値目標に関しては、個人や店舗の目標だけでなくチームの目標も設定して、協力しあえる環境作りを心がけました。

── 結果はどうでしたか?

2014年にはチーム制が本格稼働していましたが、賃貸営業一人あたりの年間売上は917万円から1,250万円まで向上しました。チームにすることによりマネジメントが分散しますので、リーダー次第では管理が行き届かない可能性もありますが、数字としては良い結果になりました。

現在ではさらに分業化を進めて、賃貸営業はシンプルに1チームになっています。

ポータルサイトの変化に対応!掲載業務と案内業務を分業化して、営業一人あたり年間3,000万円の売上に到達

専務取締役 新井 克明 様

── その後、営業チームから掲載業務と案内業務を切り離したと伺っています。着手した理由を教えて下さい。

営業を2チームに分けてからしばらくして、ポータルサイトに大きな変化がありました。物件情報や写真点数がカテゴリ別にしっかり充足した、いわゆる「代表物件」で無ければ、ポータルサイトへ一生懸命掲載しても、表示すらされない(=反響が来ない)ロジックです。

スピードを重視して取り敢えずは最低限の情報だけで物件入力のうえ、投網を投げるかのように物件掲載数を確保すれば反響がとれる時代は終わりを迎えた訳です。掲載にも明確に「質」が求められるようになりました。

代表物件が確保できず反響が取れないのは致命的ですから、このルール変更に対応するために、掲載(集客)業務を営業チームから切り離して「WEB戦略室」という部門として独立させ、ポータルサイト対策における専門集団化を目指しました。またこのタイミングで、案内業務も営業職から切り離し、専従化に取り組みました。

── ポータルサイトのルール変更がきっかけだったのですね。分業化後の体制についてもう少し詳しく教えてください。

当時は賃貸営業3名、案内専従1名、WEB戦略室で4名(入力2名、撮影2名)という組織体制としました。

このメリットは大きく3つあります。

  1. 業務内容ごとに分担できるため、掲載(集客機能)は強化され、営業職はより本来の業務(=顧客対応)に専念できる
  2. 担当するタスク範囲が狭くなるため、一つの業務を追求しようとする意欲が高くなり、各分野のスペシャリストが育てやすい
  3. 社員育成のスピードが早くなり、営業職が数字を作れるようになるまで時間がかからない

一方で、懸念事項もありました。各部門が自立する一方で部門間の対立が発生しやすくなり、セクショナリズムが生じやすい環境になることです。ここは分業化する上で、経営側がマネジメント面で注意しなければいけないポイントになりますね。

── セクショナリズムは、全ての企業が気をつけなければいけないですね…掲載業務と案内業務を分けた結果はいかがですか?

2014年の営業一人あたりの年間売上は1,250万円でしたが、2016年には2,000万円に、そして現在(2022年)では3,000万円になりました。営業が売上に直結する顧客対応に集中しやすい環境を作れた結果、この数字が上がっているものと考えています。

なお、以前はポータルサイトへ4,000件ほど掲載していましたが、現在は掲載の質を高める一方で業務効率化・生産性向上の観点から掲載物件数を絞り込み、1,000件ほどとなっています。

パートさんの採用や追客業務の外注を開始!営業社員は、さらに顧客対応へ専念できる体制に

賃貸営業課 店長 原澤 大地 様

── 2016年時点でも分業化はかなり進んでいますが、次は何に着手したのでしょうか?

2020年から、メール反響対応のアウトソーシング(外注)化と、パートさんの採用を始めました。パートさんは、内見案内や物件の写真撮影、掲載(物件入力)を担当しています。

メールの反響対応をアウトソーシングした理由は、迅速な初回のお問合せ対応の実現、より本来の営業(顧客対応)に集中できる環境の整備、追客に関するノウハウ蓄積のためです。反響対応を営業職から分けることで、朝から来客予定が入っているときや営業時間外でも、きちんとお客様対応ができます。

またお客様にとってネットでのお部屋さがしのコアタイムは18時以降の夜の問い合わせも多いため、この時間帯でも対応できるのは外注の大きなメリットですね。追客ノウハウが蓄積されてきて、社内の体制も充実してきたら、今後は社内で追客専従チームを作って対応する可能性もあります。

── 案内を営業以外に対応させるのは心配…といった話をたまに聞きます。

当社にベンチマーク視察にいらっしゃった他の不動産会社の方から必ずこのご質問を頂くのですが(笑)営業と案内専従者との間でしっかり顧客の引き継ぎ・情報共有出来る仕組み化が進めば、心配はありません。現在、ほとんどの内見案内はパートの方にお任せしています。

昔は賃貸営業が1から10までやるスタイルが主流でしたが、現在は売り上げに直結する顧客接点を最大化すべきだと考えています。営業にしかできないことに注力するということですね。お客様からご連絡を頂いた際に内見案内や物件調査・撮影などの業務で外出していると対応ができませんので、営業はできるだけ店舗・オフィスにいるべきだと思っています。

── その後、ついに現在の組織体制に至るのですね。

2021年に、全社の更なるDX推進ならびにCI戦略強化を目的としてWEB戦略室を改組のうえ新たに「DX推進室」を設置しました。現在、営業部は賃貸営業課・売買営業課・営業推進課の3課体制、管理部は資産管理課・管理課・工事課の3課体制、そしてDX推進室はCI・DX推進課とWEB戦略課の2課体制となっています。

営業推進課は、案内業務を中心とした営業サポートと経理業務、DX推進室は、掲載業務を中心とした広報戦略と社内のDXサポートを担っています。

システムはユーザビリティ重視!DX推進室を設置して管理業務と仲介業務を徹底的に効率化

DX推進室 係長 中村 祐大 様

── 2020年からイタンジの管理業務システム『ITANDI BB』、2021年から追客システム『ノマドクラウド』を導入いただいておりますが、システム選定時は、何を重視されましたか?

重視しているポイントは3つあります。

  1. ユーザビリティは高いか?(マニュアル不要・直感的かつ簡便で使いやすいか?)
  2. 安全なシステムか?(リスクマネジメント観点)
  3. RPA(※)を使って自動化できるか?

(※RPA:「Robotic Process Automation」従来人が繰り返し行う定型的な作業・業務を、人間に代わってソフトウェアによってシナリオを作成し、自動化するツールのこと。サンエイホームでは自社養成によりDX推進室の社員がシナリオ作成可能な体制としている)

管理業務システムの『ITANDI BB(+ぶっかくん/内見予約くん/申込受付くん)』は、自社だけでなく、客付・仲介会社の社員も一般ユーザーの方も使います。そのため、使いやすい仕様になっているか、安全なシステムなのか、この2点が非常に重要なポイントになります。

また、当社はRPAによってルーチンとされる知的生産を生まない「作業」とされる領域を徹底して自動化しています。一方でRPAと相性が良くないシステムもあるため、導入時にしっかりとチェックするようにしています。

── 『ITANDI BB』の導入に至った背景は何でしょうか?

入居申し込みがあった際に管理部門が紙やFAXをメインに自社営業・客付け会社様とやりとりしていたときは、部内情報共有に時間が掛かり業務効率が上がりづらい状況でした。免許証の写真が見えないから客付会社や保証会社へFAX再送を依頼する、紙を担当者へ渡すためにデスクやフロアを移動するなどです。また、デジタル化されたデータでないため、RPAで自動化もできない。これは早急にどうにかしたいと思っていました。

ITANDI BBの『申込受付くん』を知って導入したきっかけは、賃貸管理会社として早くから大東建託さんが導入していたためです。実際にとても使いやすかったですし、大企業が導入するシステムなので、セキュリティ面も安心です。

導入したことで社内の業務効率は大きく改善し、仲介会社さんやエンドユーザーの方とのやりとりも圧倒的にスムーズになりました。RPAにより、入居申し込みに関わる様々な作業も自動化し、ミスがなくなり業務効率化が達成されています。

── 顧客管理・追客システム『ノマドクラウド』を入れたきっかけは何でしょうか?

導入目的は、反響来店率の向上でした。様々な顧客管理システムを探して調査をしており、その中で1番良いと感じたシステムがノマドクラウドでした。

実際にお部屋さがしをするエンドユーザー目線で検証した際に、使い勝手がとても良かったんです。画面はスマホに最適化され、来店予約も自分でとれてコミュニケーションもとりやすい。すぐに導入を決定しました。

導入後は徐々に来店率も向上しており、目標来店率に到達できる月も出てきましたが、まだ安定して達成できていません。最近ノマドクラウドの「追客改善・月次分析レポートサービス」も契約させていただいたので、これから追客業務の改善にも取り組む予定です。

── ちなみに、RPAでどのような業務を自動化されていますか?

細かなものまで挙げると、知的生産を生まない「作業」とされる業務処理において、全社では100以上のタスクを自動化しています。

管理部門のITANDIさん関連の業務で例を挙げると、下記になります。

  • 『ITANDI BB』への掲載の自動化(CSVインポートの自動処理)
  • 入居申込があった際に『ITANDI BB』と連動させて自社サイト・各ポータル物件掲載を自動で落とす処理
  • 『ITANDI BB』で管理物件への内見コメントがあった際に、社内のチャットシステムに自動通知する処理

ノマドクラウド関連の仲介業務で例を挙げると、下記になります。

  • 反響集計の自動化(反響が入ったら管理シートに自動転記)
  • 各種社内帳票との連携(単純な帳票間の転記作業自動化)

KPI指標をはじめとする各数値の最新状況がいつでも確認できる状態にしています。そうすることで、常に速いスピードでPDCAが回っています。

RPAが稼働しているPC・多数のモニターで複数のシナリオが管理されている様子

── 今後、考えられていることを教えてください。

今後はさらにRPAを活用のうえ、知的生産を生まない「作業」とされる領域のタスクを徹底的に自動化して、営業部門や管理部門の社員がさらにお客様・オーナー様に集中できる環境を整備したいと考えています。

一方で、今はRPAで各システムを連携させていますが、本来はひとつ のシステムで情報共有できることがベストです。イタンジさんにはぜひ賃貸・売買・賃貸管理を一元化した「基幹システム」の開発にもチャレンジしてほしいと思っています。今後も期待していますよ!

–新井克明様、原澤大地様、中村祐大様、貴重なお話をありがとうございました!