テック入門for賃貸仲介

SNSでファンづくり! TikTok運用における注意点とコツ

不動産賃貸業におけるオンライン集客の重要性は年々増すばかりです。ポータルサイトの利用者が多いことは言わずもがな、専用アプリやSNSなど、顧客と業者との接点は多様化しています。

すでにオンライン集客に力を入れている会社様も多くあります。2021年4月に開催したセミナー「TikTok広告での新集客方法」において、WealthPark株式会社様から、オンライン集客数を伸ばすためには

  • マーケティング部門の設立
  • 自社ホームページの効果的な活用
  • MEO(MAP Engine Optimization)対策
  • SNSの活用(YouTube・TikTokなど)

などの対策が有効というお話がありました。

今回はSNS、中でもTikTokを利用した集客に焦点を当てます。TikTokはこれからの顧客である10〜20代の世代に人気で、不動産賃貸業においてチャンスにあふれたプラットフォームといえます。実際に以前イタンジンでも紹介したように、Lakia不動産様などが TikTok を通した集客に成功していらっしゃいます。

一方で、SNS×不動産業界の事例はまだまだ少なく、どのように運用してよいのか、どのような点に注意すべきなのかというノウハウがまだ蓄積されていません。そこで本稿では最低限おさえておくべき宅建業法上の注意点と、ファンづくりとしてのTikTok運用のハウツーについて触れたいと思います。

TikTok 運用にからむ法律

SNS運用において盲点となりがちなのが、SNS投稿も内容次第で「不動産の表示に関する公正競争規約」(以下「表示規約」)第4条第5項における「広告表示」(以下「不動産広告」)に該当することです。

ここでいう「表示」とは、不当景品類及び不当表示防止法(以下「景表法」)第2条第4項における「顧客を誘引するための手段として、事業者が自己の供給する商品又は役務の内容又は取引条件その他これらの取引に関する事項について行う広告その他の表示」を指します。

SNSへ投稿した動画に、具体的に物件名や賃料など、いわゆる不動産広告の内容を出すことにより、仮にその情報が一部であっても、当該動画は不動産広告(媒体としては、表示規約施行規則第2条第4号における「インターネット広告」に該当)とみなされます。

なお、SNSの運営会社にお金を払い、狙った属性にアピールする有料広告だけでなく、1ユーザーとしておこなう一般的な投稿など関係なく、不動産広告に該当し得ます。

ここまでを整理すると、不動産広告に該当するか否かのポイントは、以下図の通りです。

SNS表

※当社より公正取引協議会連合会に確認した内容に基づき判断しております。不動産広告に該当するか否かについて専門家等へ確認した上でSNS運用を行なうことを推奨いたします。

そこで、不動産広告としてTikTokt投稿を行なう場合、いくつかの注意点が浮上してきます。

注意点1. 表示規約を遵守する

不動産広告に該当する内容でのTikTok投稿については、具体的に、TikTok投稿上に「取引態様、物件の所在地、交通の利便性など」を表示規約上必要な事項を動画内に組み込む必要があります。

注意点2. おとり広告とみなされないよう配慮する

ご存知の通り、募集を終了した物件の情報は削除しなければ、その投稿は「おとり広告」に該当します。この為、募集状況に応じて都度その投稿を削除し、または募集を終了した旨を明示するなど、不動産広告とならないように措置して掲載しなければなりません。

注意点3. 「最高」「No.1」など特定用語の扱いに十分気をつける

既存の不動産広告と同様に、不当表示と見なされうる表現には十分気をつけましょう。もし特定用語を使う際には、合理的な根拠も記載しなければなりません。

要するに、ポータルサイトへの不動産広告掲載とまったく同じ注意点がTikTok投稿にも適用されると考えておけばよいでしょう。万が一にも表示規約に違反してしまい、宅地建物取引業者として表示規約第27条各項等に基づく「違反に対する措置」を受けてしまうことになれば大ごとですから、投稿の前に、TikTok投稿が不動産広告に該当するか否か、そしてその表現をチェックする体制の整備も推奨します。

「ファンづくり」のためのTikTok運用

上記の通り、不動産広告に該当する場合、TikTok運用のハードルは高いと考えられます。
前述の通り、物件が埋まり次第TikTok投稿を消していく必要などがあり、オペレーションは複雑化することを覚悟しなくてはなりません。であれば、会社や店舗のファンを作ることを目標にして、不動産広告に該当しないTikTok投稿を行うことの方がよいかもしれません。いわゆる「反響獲得」にはつながりにくいかもしれませんが、長期的な目で見て、来店につなげることは可能だと考えます。

たとえばイタンジが運営するお部屋探しサービス『OHEYAGO(オヘヤゴー)』においては、物件そのものを紹介するのではなく、オンライン内見サービスをしているという側面をピックアップするなどして、店舗への関心を喚起する工夫をしています。

動画を見て興味をもってくださった方が、トップページから自社サイトに来てくださったり、または動画のついたコメントに対してサイトへ誘導をおこなったりというアプローチで、来店予約につなげるという施策です。もしくは直近での来店につながらなくても、認知度が上がることで将来の見込み客増加に寄与していると考えることもできます。

運用・撮影におけるTips

ファンづくりという意識でTikTok運営をするにあたって、3つのポイントをまとめます。

1.プロフィール作成のポイント

アカウントのトップページの説明欄等に、このアカウントに掲載する動画は不動産の売買又は賃貸借の仲介を目的とするものではないことを明記する。(あくまで店舗の紹介とする。)

2. 動画作成のポイント

目指すのは、物件への問い合わせではなく、会社/サービスのファン作りです。TikTokらしい、カジュアルさを意識して撮影すると、ユーザーにも喜ばれるでしょう。

3. 他社の例を見つつ、宅建業法を遵守する

具体的には、

  • 店舗 / スタッフ紹介動画
  • エリア紹介動画
  • リフォーム Before – After
  • オンライン内見サービス

などの切り口で発信している例が見られます。他にもさまざまな切り口が考えられると思います。

SNSを活用して、不動産賃貸業のニューノーマルを開拓

不動産業界におけるSNS活用事例は多いとはいえず、私たちイタンジも、新しい施策は手探りで行なっている状況です。ただし、SNSもインターネットである以上、不動産公正競争規約が当然に適用されることはきちんと認識しておく必要があります。

「今はまだ様子見をしておこう」というお考えもあるかと思いますが、若い世代がSNS中心の生活をしている現状を鑑みれば、まったく手を出さずに時代に置いていかれるケースも考えられるでしょう。結局は、常に最新の情報をキャッチしてチャレンジしていくことが大切ではないでしょうか。

ぜひ新たなヒットコンテンツを生み出し、次世代のお客様のハートをキャッチしましょう!