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【管理会社向け】電子契約実施のためのマニュアルを解説! 導入に向けたto doとは?

2021(令和3)年5月12日に成立した「デジタル改革関連法」において、宅地建物取引業法(以下「宅建業法」)も改正の対象となっており、不動産取引の電子化がいよいよ実現することは既報の通りです。

より具体的な法が定められた「宅地建物取引業法施行規則」(昭和32年建設省令第12号)の改正とともに、実際の運用において注意すべきポイント等をまとめた「重要事項説明書等の電磁的方法による提供及びITを活用した重要事項説明実施マニュアル」(以下、「電子契約実施マニュアル」)が2022(令和4)年4月27日に公布されました(施行日は2022年5月18日)。

本稿では、電子契約実施マニュアルの内容を紹介した上で、不動産賃貸契約において電子契約を導入する上で対応すべきことを解説します。

*電磁的方法による提供とは:宅建業法第34条の2、第35条及び第37条に基づき交付する書面(以下、「書面」)について、紙に代えて、電子的に作成した書面(以下「電子書面」)を電子メールや Web からの ダウンロード形式等を活用して電磁的方法により提供すること。

電子契約実施マニュアルのポイント

公布された「宅地建物取引業法施行規則」によると、改正箇所は次の4点でした。

・宅建業者が書面を電磁的方法で提供する際に用いる方法
・宅建業者が書面を電磁的方法で提供する際に適合すべき基準
・宅地建物取引業者が、書面を電磁的方法で提供する場合に、あらかじめ相手方から承諾を得る際に示すべき内容
・宅地建物取引業者が書面の交付を受ける相手方から承諾を得る際に用いる方法

これらによって義務付けられたことや注意すべき点を以下に解説します。

(1)電磁的方法による提供に係る承諾の取得

まず、宅建業者が書面を電磁的に提供するに際し、相手方から承諾を得ることが必要です。必ず確認すべきこととして

「宅建業者が利用予定のソフトウェア等に説明の相手方等が対応可能であるか」

が挙げられています。相手方のIT環境を聞き取り、宅建業者が書面を電磁的に提供する場合に、相手方のIT環境が対応可能か、確認しておく必要があります。この際、相手方がスマートフォンを使用すると言った場合は、文字や画面自体のサイズが小さく見づらいなど、電子書面の見やすさに課題があることが考えられます。そこで、なるべくパソコン等の電子書面を見やすい端末を利用するよう、相手方に推奨することが望ましいと記載されています。

そのほかの説明事項として、宅建業者は、

①重要事項説明書等の電子書面を提供する方法(電子メール等での提供/Webページからのダウンロード/USBメモリ等での提供のいずれか)
②重要事項 説明書等の電子書面のファイルへの記録の方式(ソフトウェアの形式(Excel や PDF 等)やバージョン等をいう。以下同じ。)

を説明の相手方へ示す必要があります。承諾を得る際も同様に、

・電子メール等で承諾を得る
・Webページ上の回答フォームから承諾を得る
・USBメモリ等の交付などで承諾を得る

のいずれかの方法をとる必要があります。承諾を得られない際は、従来通り紙媒体を用いて契約を進めていくことになります。

(2)重要事項説明書等の電磁的方法による提供の要件等

書面を電磁的に提供するに際して、

・説明の相手方等が出力することにより書面(紙)を作成できるものであること
・電子書面が改変されていないかどうかを確認することができる措置を講じていること

という条件を満たす必要があります。35 条書面については、提供する時点で改変防止措置を含む全ての要件を満たす電子書面を提供することが必要です。

1つ目については、印刷に適合する書式で書面を作成すれば問題ありません。2つ目に関しては、電子署名やタイムスタンプを用いることでなりすましや改ざんの防止をする必要があります。電子署名で用いられる電子証明書及びタイムスタンプには有効期間(*電子証明書は最長5年、タイムスタンプは最長10年)があるため、それを相手方に説明した上で、有効期間後の取り扱いについて事前に相手方と協議しておくことが望ましいとされています。

また、従来通り、重要事項説明書等の電磁的方法による提供に係る宅建士の明示(電子書面への記名)も義務付けられています。一方で、押印は不要となります。

電子書面を作成するにあたって、ファイルへの記録の方式に指定はありません。ただ、他のファイル形式に変換する際などに、使用していた文字や表が文字化けしたり崩れて表示されたりしていないか等をきちんと確認しましょう。

前述の通り、電子書面の提供方法は次の3つです。

・電子メール等での提供
・Webページからのダウンロード
・USBメモリ等での提供

電子書面を提供した際には、説明の相手方に対し、提供した旨の通知が必要です。通知の方法に指定はありませんが、メール、電話やチャットツールでの通知が考えられます。

なお、指定流通機構への登録を証する書面を提供する際にも同様のことを遵守しましょう。

(3)電子書面が改変されていないかどうかの確認方法の説明

提供する電子書面について、改変されていないかどうかをどのような方法で確認することができるのか、当該方法が提供時点から将来のある時点において改変されていないかどうかを確認するために必要な方法であることを含めて、説明の相手方等に対して説明を行い、確実に理解してもらう必要があります。また、この説明は対面であっても非対面であってもよいと記述されています。

弊社の見解では、説明は口頭でする方法だけでなく、Webページ上での表示・記載内容からでも対応可能と考えております。
記載例:電子署名のご確認にはAcrobat reader等のソフトウェアを用いて確認頂けます。

また、実際に電子契約をおこなう際に、電子書面が改変されていないことを確認してもらう必要があります。(PDFを開き、署名パネルから確認する為のフローの表示等。)

(4)電子書面の保存の必要性及び保存方法の説明

電子書面の保存は重要であるため、電子書面の保存の必要性や保存方法を説明することが望ましいです。

(5)電子書面が閲覧できないトラブル等が解消しない場合の電磁的方法による提供の中止

電子契約の過程で、電子書面が閲覧できない等のトラブルが生じたり、相手方から「やはり紙媒体での提供を希望する」旨の申出があったりした場合、電磁的方法による提供を中止する必要があります。その後、書面(紙)により交付する形に切り替えて、対応を行うことが可能です。

この場合、

・拒否する旨を記載した書面(紙)を受領
・拒否する旨を電子メール等で受信
・Webページ上で拒否する旨を取得
・拒否する旨を記録したCD-ROMやUSBメモリ等の受領

といった方法で、拒否する旨の申し出を取得する必要があります。つまり、口頭のみで承諾を得るのではなく、ログが残る形でおこなう必要があるということです。

オペレーションのフロー

上記の内容をまとめると、実務の流れは次の図のようになります。

ガイドラインによると、「電磁的方法による提供にかかる承諾」は、「電磁的方法による提供の対象となる書面の種類が承諾の際に明示的に特定されるのであれば、一度に承諾を得ることは可能」とのことです。つまり、「重要事項説明書と契約締結時書面の両方について、電磁的方法による提供をおこないます」と提示し、一度に承諾を得ることが可能です。

ただし、それぞれの内容についての同意(≒署名)は、トラブル回避のためにも、それぞれ別個に得ることが望ましいでしょう。

また、当社の見解では、「重要事項説明書等の電子書面を提供する方法」「重要事項説明書等の電子書面のファイルへの記録の方式」「電子書面が改変されていないかどうかの確認方法の説明」「電子書面が改変されていないかどうかの確認方法の説明」「電子書面の保存の必要性及び保存方法の説明」は、電子交付をする事に対する事前承諾の際に、併せて説明したり、WEB画面に表示したりすることでも条件を満たすものと考えます。

ITANDI BB+で簡単に電子契約を実現

電子契約解禁は社会的な注目度も高く、今後は電子契約を希望するお客様が増えるものと考えられますので、環境を整えることは緊急の要件であるといえます。

電子契約を実現するためには、入居申込にかかる一連の流れをオンライン化する必要があります。これらは、ITANDI BB+「申込受付くん」「電子契約くん」をご導入いただくことで簡単に準備することができます。

契約の電子化は、お客様の利便性も向上させるだけでなく、管理会社様にとっても

・大量の書類の作成・印刷・梱包・発送作業がなくなる
・書類不備や捺印漏れに伴う差し戻し対応の削減
・契約書のスキャンやファイリングなどの保管業務の削減

から解放され、最短1日で契約を完了することが可能になります。また、紙代・印刷代・郵送代・印紙代が削減できるほか、業務効率化によって長時間労働の必要性がなくなり、人件費の削減も実現できます。

そのほか、

・遠隔地での契約が対応可能になる
・紙の削減でSDGsを推進

という側面も。

具体的にどのように導入すればよいのか、導入後の運用におけるサポートはどれくらいあるのか、費用はいくらかなど、担当よりご説明させていただきます。お気軽にお問合せください。