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電子帳簿保存法が不動産業界を変える?電子契約のメリットや保管方法を解説

電子帳簿保存法が不動産業界を変える?電子契約のメリットや保管方法を解説

不動産業界では、オンラインでの契約業務や電子署名による捺印など、様々なIT技術を取り入れDX化を進めています。その中で他の業界と比べ管理が難しいのが、紙ベースでの保管が義務付けられた契約書。ペーパーレス化を進める企業が多いですが、なかなか踏み切れずにいる企業も多いでしょう。

2022年1月に電子帳簿保存法が改正され、一部の電子契約データなどが電子データのまま保存が可能になりました。、また、2022年5月には宅建業法第35条、第37条書面における電子書面交付が可能になる予定です。本記事では、このような法改正の概要とメリット、社内で取り入れるポイントを解説します。いち早くスタートダッシュを切り、より競争力のある企業へと踏み出しましょう。

目次

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電子帳簿保存法とは

電子帳簿保存法とは、1998年7月に制定された法律です。会社法などで定められた、税務書類・契約書・請求書・見積書などの帳票は紙ベースでの保管が義務付けられていますが、電子帳簿保存法により、「一定の要件を満たせば、データで保存・管理することを認める」ことが可能になりました。保存方法は以下3つの区分に分けられます。

  • 電子帳簿等保存:会計ソフトなどで電子的に作成した書類をデータのまま保存
  • スキャナ保存:紙で受領・作成した書類を 画像データで保存
  • 電子取引データ保存:電子メールなどで授受した取引した情報データで保存

参考:国税庁|電子帳簿保存法が改正されました

また、電子データを保存する際には「真実性・検索性・見読性」が確保された状態であることを規定しています。これらが網羅されていないと、書類自体の信憑性が疑われる可能性があるので注意が必要です。

真実性 認定タイムスタンプで個人が識別でき、改変不可能もしくは改変記録が残るシステムを利用、または社内規程があること
検索性 取引年月日、取引先、取引金額などの主要項目を組み合わせて、範囲指定内から検索できること
見読性 データ保管場所に備え付けのパソコン等のデバイスが設置され、マニュアルなどが置かれ必要があれば速やかに出力できること

参考:国税庁|電子帳簿保存法上の電子データの保存要件

施行当初はうまく活用されていない一面もありましたが、これまで何度も緩和措置や法改正が行われ、2022年5月からは下記の書類も相手方の同意が得られれば電子データでの契約・書面交付が可能になります。賃貸物件の契約書類がデータ保存に対応すれば、不動産業界のDX化にも一気に拍車がかかることが期待されています。

  1. 媒介契約書(賃貸契約においては交わさない場合もあります)
  2. 重要事項説明書
  3. 賃貸借契約書
  4. 定期借地権設定契約書
  5. 定期建物賃貸借契約書

電子帳簿保存法に対応することで得られるメリット

電子帳簿保存法に対応することで、現場の業務効率があがるだけでなく企業の価値が向上するといえます。具体的なメリットは下記の通りです。

  1. ペーパーレス化
  2. 環境への配慮
  3. コスト削減(印紙代、郵送代)
  4. 業務効率の向上
  5. スピーディな取引

契約内容や物件概要、見積もりなどをデータで保管することになるので、数百〜数万枚/日の紙の削減につながると共に、ファイルや棚のスペースを削減できます。これは世界中で取り組んでいるSDGsの取り組みとも直結し、環境保護にもなるといえます。

紙の契約書の場合は印紙代がかかっていましたが、データの場合は不要です。封筒や郵送代も削減できるため大幅なコストカットとなるでしょう。パソコンなどのデバイス上で情報を確認できるため、FAXを取るために席を立ったり、書類回覧のために上司を待つということもなくなり、業務効率向上が期待できます。

さらに電子契約にすれば、賃貸物件契約のために遠方から不動産会社を訪ねる、忙しくて送られてくる契約書がなかなか受け取れないということもなくなります。いつでも好きな場所で契約書の確認ができるようになり、顧客目線でも柔軟な取引が可能になるため、会社のファンを増やすことができるかもしれません。

法改正による変更点

電子帳簿保存法は様々な関連法案と共に、より現代社会のニーズに適合するよう改正を重ねてきました。特に2020年以降の法改正により、不動産業界のIT化は加速したと考えられます。最近の法改正による変更点をおさらいしていきます。

2022年は電子データの保存が義務に

2022年1月1日からは、全ての企業において電子データ保存が義務化されました。これまでは、メールで受領した請求書のPDFやオンライン請求書発行システムで発行された請求書などを印刷して保管しておくことが可能でした。

今後は全てのデータを電子データで保存をすることになります。一定の条件に該当する企業には2年間の猶予期間も設けられていますが、社内システムの構築と共に業務ルーティンの見直しも必要になるため早めに検討を始めないと出遅れてしまいそうです。

メールでのやりとりも対象となるため、多くの企業が該当すると考えられます。基本的な保存要件である本人性と非改ざん性を担保した取引ができるよう、社内のワークフローシステムの整備をする必要があるでしょう。

参考:国税庁|電子帳簿保存法が改正されました

また、冒頭で述べた通り、同年5月からは賃貸借契約書類に関しても電子データ保存が可能になります。取引金額も大きいためこれまで紙ベースでの保管が義務づけられていました。

経済産業省が示した「令和3年度(2021年度)経済産業関係 税制改正について」において、今後の検討事項として印紙税のあり方の検討という項目がありました。電子データ保存が広がれば、必然的に印紙が不要になっていきます。IT化が進むにつれて、これまで必要だった制度やシステムが不要になることが増えてくることが予想されます。

2021年は承認制度が廃止、タイムスタンプ制度緩和に

2021年は電子帳簿保存法の抜本的見直しが行われ、特にスキャナ保存の作業効率が格段にアップしました。電子帳簿保存とスキャナ保存においては、電子保存開始前に必要だった税務署長からの事前承認が廃止になりました。

また、スキャナ保存特有のルールであったタイムスタンプ付与の日数期限も3日以内から2ヶ月以内にまで緩和され、紙データ原本とデータの照合を行う定期検査も廃止されました。スキャンした原本はその場ですぐに廃棄が可能です。

3つの保存方法ともに、データベース上で検索できなければいけない項目が「日付・金額・取引先」のみになり、システム導入もしやすくなりました。電子取引データ保存に関しては、売上高1,000万円以下の事業者は全ての検索項目が不要です。

参考:経済産業省|令和3年度(2021年度)経済産業関係 税制改正について

一方、スキャナ保存と電子取引データ保存で保存されたデータに不正等が見つかった場合には、重加算税の加重措置が整備されました。データ保存の際に偽装や隠蔽があり、その事実報告を怠ったことに対して、重加算税10%が加重されます。保存要件が満たされているか今一度確認し、必要があればシステムの更新を行いましょう。

同年5月には「デジタル改革関連法」が成立しました。デジタル化を妨げる関係法律を改正する狙いがあり、宅地建物取引業・借地借家法などの改正が行われました。具体的な改正点は2点です。

1つ目は重要事項説明書および37条書面などの宅地建物取引業者が契約時に交付する書類に押印が不要になった点。2つ目は重要事項説明書、37条書面、媒介・代理契約締結時の交付書面、レインズ登録時の交付書面を電子データで交付することが可能になった点です。あくまでも相手方の承諾を得ることと前置きがあり、不動産の顧客層によってはすぐに適応するのは難しいことも予想されます。

2020年は電子データが電子データのまま保存可能に

2020年は電子取引データ保存に関するルールが緩和され、より活用しやすくなりました。従来は、改ざん防止マニュアルを作成しそれに則った事務処理を行うか、書類を受領後遅滞なくタイムスタンプを押すという方法をとらなければ、電子取引データのまま保存することはできませんでした。

そのため初期投資や業務負荷もあり、電子データでやりとりをしていても、最終的に印刷をして紙で保存をせざるをえないという企業が多くありました。その後電子データの書き換えが安易にできないシステムも登場し、本人性と非改ざん性が担保されることから、電子データのまま保存という選択が可能になったのです。

バックオフィスの効率化による企業等の生産性向上を図る観点から、電子的に受け取った請求書等をデータのまま保存する場合の要件について、ユーザーが自由にデータを改変できないシステム等を利用している場合には、タイムスタンプの付与を不要とするなど、選択肢を拡大します。

引用元:財務省「令和2年度税制改正」p.13 2020年3月

また同年、民法第522条2項に「契約の成立には、法令に特別の定めがある場合を除き、書面の作成その他の方式を具備することを要しない。」という改正が加えられました。これにより、電子契約も有効な契約であるということが示されたのです。

2000年に施行された「電子署名法」では電子メールやオンライン上での申し込みも法的に有効であることを認めています。申し込み〜契約まで一定の条件をクリアすれば完結できる土台作りが完了した年といえます。

不動産賃貸契約で電子帳簿保存法に対応する際のポイント

具体的に不動産賃貸契約を行う際、電子帳簿保存法にどのように対応していくべきなのかわからない担当者の方もいることでしょう。最近の顧客は口コミやネット検索で、より良いサービス提供や環境への配慮に取り組んでいる企業を見極めていきます。電子帳簿保存法に対応することで、企業として競争力を高めることが、今後のファンを増やしていくことにつながるかもしれません。対応する際に気を付けるポイントを解説します。

紙で契約したものをオンラインで保管する場合

 従来通り紙ベースの契約書類で契約を行い、それらをスキャナ保存して保管する場合は下記3点の確認をしてください。

  1. データ保存時刻の確認及び、不可変性を確保できるシステム利用
  2. データ授受後の社内ルーティンの見直し
  3. 重要書類のスキャンはカラーで

スキャナ保存で1番ネックなのが、タイムスタンプの付与です。こちらは、データ保存時刻が確認でき、変更・訂正履歴が残るもしくは変更・訂正ができないシステムを利用することで、不要になります。

また、データ受け取り後7営業日+最長2ヶ月以内に事務処理を完了する必要があるため、企業によっては社内ルーティンを見直す必要があるかもしれません。

重要書類のスキャンは基本的にグレースケールではなくカラースキャンとされています。スキャン後は原本の破棄が原則認められているため、カラースキャンできているかを確認してから破棄するなどの流れにしたほうが安心だといえるでしょう。

電子契約したものをオンラインで保管する場合

PDF化した契約書類をメールに添付しお客様に送付後、オンラインでIT重説を行い、本人確認が可能な電子署名で署名を行うのが電子契約の流れです。署名後の契約書データはそのままデータで保管をしなければいけません。導入を検討している場合は下記3点を確認してしてください。

  1. 電子契約サービスの利用
  2. 契約承諾までの期間
  3. 保存環境

電子契約に関しても、タイムスタンプ機能が備わっており、不可変性が担保されたシステムを実装することになるでしょう。最近は機能をカスタマイズできたり、経理システムと連携できたりとそれぞれの企業の目的に合わせ選択肢が広がってきました。

電子契約の場合、双方が承認をしてはじめて契約成立となります。相手が承認を押さない場合、契約が成立しない状態が続くことも考えられます。承認期日までに署名しなければ契約は破棄となる但書を加えてもいいかもしれません。

全ての保存方法において、確実なバックアップ環境を整備しましょう。パソコン自体のHDD内の保存だけでは、システムの不具合や天災などの影響で、データが消えてしまうことも考えられます。クラウドサービスなども利用し、対策を考える必要があります。

まとめ

電子帳簿保存法の概要と不動産賃貸契約業務に対応するために抑えておきたいポイントについて解説いたしました。現在政府が行っている社会実験を経て、2022年5月より相手方の同意があれば賃貸契約書面は電子データでの交付が可能になる予定です。

賃貸契約業務のIT化は、現代の顧客満足度にも大きく影響してくるはずです。ただし焦って一気に全ての業務のIT化を進めると、社内で混乱が生じるため小さく始めるのがポイントです。まずは既に電子データ保存が可能な更新業務などからはじめてみるとよいでしょう。

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